生き方をDIYする拠点…LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜の第1弾イベント「バンライフフェス」レポート

八ヶ岳エリアの入り口として使う人も多い山梨県北杜市小淵沢。その中央道・小淵沢I.C.からもほど近い高原エリアに、今年7月新しい拠点が誕生しました。LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜です。

全国各地に拠点としてつくられているLivingAnywhere Commons

LivingAnywhere Commonsは「自分らしくを、もっと自由に」をビジョンに、場所やライフライン、仕事などの制約にしばられることなく、好きな場所でやりたいことをしながら暮らす生き方を実践することを目指して生まれた多拠点のCo-living施設です。現在、福島県の会津磐梯、静岡県の伊豆下田、徳島県の美馬、福岡県の田川など全国に7拠点があり、ビジター利用に加え、メンバー会員となり月額25,000円で全拠点を自由に使うこともできます。

拠点ごとに設備や特徴はさまざまですが、ワークスペースやコミュニティスペース、キッチンやゲストルームなど、仕事をしたり交流したり、あるいは暮らしたりするためのスペースが用意されており、遊びに行くこともできれば、拠点として過ごすこともできるようになっています。

7月にオープンを迎えた新拠点・八ヶ岳北杜は、「Living Lab」がコンセプト。まさに“LivingAnywhere”を体現すべく、衣食住や水光熱、トイレやお風呂といったインフラの制限から解放された状態で、便利に楽しく暮らせる拠点を目指しており、2023年には100%オフグリッドを実現することを目標にしています。

LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜。

3,000平米の敷地にある設備も、集まる人々といっしょに試行錯誤しながら整備を行っています。現在はオートキャンプ場を中心に稼働しており、宿泊棟・レジデンスやコワーキングラウンジ、配信スタジオ兼バーラウンジなどを備える建物の整備を含め、少しずつ進められています。

移動する居住空間で暮らすバンライフ

そんなLivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜で初のイベントとして8月1日に行われたのが「バンライフ フェス」です。

「バンライフ(VAN LIFE)」はここ最近日本でも注目を集めるようになっているライフスタイル。「バン」、すなわち「車」で暮らすことで、移動しながら車を居住空間にしながら生きるライフスタイルです。このイベントではそんなバンライフを楽しむ人たちがオートキャンプスペースに集まりました。

車で寝泊まりというとキャンピングカーをイメージする人も多いでしょうが、「バンライフ」カルチャーでは多くの人が既存の自動車に手を加えて「住める車」に変えています。

バンライフを楽しむ人たちが集まりました。

LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜のプロデューサー兼コミュニティマネージャーであり、自身もバンライフの実践者として知られる渡鳥ジョニーさんによると「バンライフはDIY的」だといいます。

渡鳥ジョニーさん。

「車で生活といっても、いろんなスタイルがあります。キャンピングカーみたいなものもあれば、モバイルハウスって呼ばれる軽トラに家を乗せてしまうようなスタイルもある。バンライフってフレーズでまとめられるカルチャーはDIYでいろいろやる人が多いです。自分でやるとコストを抑えられるって場合もあるんですが、それ以上に感じるのは『ないから自分たちでつくろう』という意味合い、カルチャーです。自分たちでやることで『もっとこうしよう』『こうした方がいいかも』という試行錯誤を含めて楽しんでいる。それってもっといえばライフスタイルや人生をDIYするところともつながってると思うんです。今までが誰かの決めたライフスタイルを消費する時代だったとして、それが限界を迎えている。ひとりひとりが自分自身にフィットした生き方をつくっていく、DIYしていくというのが本来の姿だと思うんです。バンライフというスタイルを選ぶ人、選びたいと思う人ってそういうふうに自分で生き方をDIYしていこうとする人が多いのかなと感じています」(渡鳥ジョニーさん)

実際にこの日集まった人たちの車を見渡しても、ベースとなっているのは家庭用の自家用車やバンなどがほとんど。その内部にそれぞれが手を加えて、泊まったり過ごしたりできるようにしていました。

自分たちの手でカスタムしたという人も多いのですが、それまで車などのカスタム経験はなく、初めてのチャレンジでつくったという人も少なくないのが印象的でした。「これが初めて!?」と感じるような車ばかりでしたよ。

「箱根移住夫婦の『休日バンライフ』」というYouTubeチャンネルを開設している方の車。こちらもDIYで車内を改装したそうです。

また、「車中泊」のイメージを変える車が多かったのも驚いたポイントです。ベッドなど寝ることができるスペースが大きなポイントですが、単に眠れるだけでなく、クッション性が高く気持ちよく寝られそうなベッドにしている車もたくさんありました。

車にテントを乗っけたタイプも。テント内にある布団もふかふかでした。

さらに、今回のバンライフのテーマのひとつにもなっていたのがポータブル電源。走行中の車から充電可能な大型ポータブル電源を搭載し、車内で電化製品を使用できるようにしている車もありました。

なかには冷蔵庫やエアコンを搭載した車も。カーエアコンの場合エンジンを切ったまま使うことはできませんが、ポータブル電源を使うことで、エンジンを止めて車中泊するときにもエアコンを使うことができるんです。まさに移動する居住空間です。

Moving Baseという車載可能なバッテリーを扱うメーカーさんの車には冷蔵庫などが。

Moving Baseのバッテリーを使って稼働させているエアコン。こちらはバッテリーのみで20時間ほど稼働できるそうです。

さらに大型液晶でゲームも。

こちらは改装し、この日会場で引き渡しされたばかりというバン。オシャレなつくりに加え、家庭用のエアコンなども。

ちなみに今回のイベントではポータブル電源「EFDELTA」シリーズを手がけているEcoFlow Technology Japanがスポンサーになっており、実際に会場の屋外スペースで「EFDELTA」を使っていろんな機器が動いていました。PCやスピーカーなどはもちろん、電力消費の激しい炊飯器などもこの電源で稼働。夕食用のお米はEFDELTAと炊飯器で炊いたものが使われたんです。

会場ではEFDELTAを使って音楽を流したりいろんな電化製品を稼働させていました。

屋外でWi-Fiも。

イベント出店していたプリントサービスのブースではドライヤーが。電気インフラのない屋外でもさまざまな家電製品が動いていました。

電力消費の激しい炊飯器までポータブル電源で。

思い思いの時間を過ごすための場所

バンライフフェスで感じたもうひとつの面白さは、過ごし方でした。自分の手でつくりあげた車でやってきて、「フェス」という形で集まってはいますが、会場ではほとんどの人がまったりと過ごしていました。

キャンプのようにテントを張ったり、何かアクティビティを楽しむという感じとも違い、車の中や外でゆっくりお酒やコーヒーを飲んだり、だらっと話したり。何をするでもない時間を楽しむ時間が多かったのが印象的です。

「僕は自然のなかで暮らすのにすごく興味があるけど、毎日テントを立てて暮らしたりするのは面倒じゃないですか。ずっとキャンプは無理なんです。そうじゃなくて、家と同じようなクオリティで自然のなかで暮らせるのがバンライフなんです。普段の生活を持ち込んでポップアップしている感覚」(渡鳥ジョニーさん)

バンライフといっても、そこに参加する人すべてが完全に車で生活しているわけではありません。週末だけといった形でバンライフを楽しむ人も多いです。そういう意味では、アウトドアの延長線上であり、キャンプでは泊まれないような場所で泊まれるというところからバンライフをする人もいました。

なんと大型の観光バスをカスタムした人も。

同時に感じたのは、どこかで生活ともつながっているという感覚です。日常とまったく切り離されたレジャーとして遊びに行くというより、日常のなかにアウトドアや別の日常を組み込んでいくような感覚ともいえます。

より場所から自由になろうと思えばバンでの暮らしが多くなるし、自宅での暮らしや生活に軸足を置きながらときどき別のところに暮らしを持っていくということもできる。そのグラデーションがバンライフの面白さであり、「ライフスタイルのDIY」とつながっているという点なのかもしれません。

どこでも暮らせるための拠点

「どこでも泊まれる」ようにできているのがバンライフの車たち。LivingAnywhere Commonsのような拠点の存在はバンライフを楽しむ人にとって重要なものだといいます。

ある参加者の方は「安心して泊まって、料理もできて、心配なくリラックスできる場所は貴重」と話してくれました。

車中泊できる車があっても、実際に車を停めて車中泊していい場所というのは限られています。たとえば車中泊の際に話題にあがることも多い道の駅。明確に車中泊をNGとした道の駅が現れたことも話題になりましたが、国土交通省は「休憩施設なので宿泊はできないが仮眠は問題ない」という見解を示しています。では、どこからが仮眠でどこからが宿泊なのか、時間なのか設備なのか、線引きは曖昧です。各施設のサイトでも極端な利用でなければちょっとした車中泊なら可能と受け取れる注意書きをしているところもあります。

この日の会場には犬も。ワンちゃんといっしょにのびのび車中泊できるのもこういう場所の魅力です。

とはいえ、グレーゾーンが大きいそうした場所ではやはりリラックスはできないですし、SNSや動画配信サイトなどを通じて配信した際に問題視される可能性もあります。また、料理などは当然禁じられているところが多いです。

LivingAnywhere Commonsのような拠点であれば、料理などもできるし、安心してリラックスできるというわけです。

この日のイベントでは八ヶ岳エリアで人気のブルワリー・うちゅうブルーイングさんのビールも登場。

夕方からは焚き火もスタート。

さらに、今回のようなイベントがあればバンライフを楽しむ人同士の交流もできます。お互いの車を見学したり、話をしてつながっていったり、まさに拠点としての機能といえるでしょう。

渡鳥ジョニーさんは今回のバンライフを「この拠点の象徴的なもの」と表現していました。

「僕の掲げてるコンセプトに『Be Outsider』というのがあるんです。お外からはじめよう、ということですね。この外というのは屋外という意味もありますが、都市の外とか常識の外、想像の外という意味もある。だから外の空間からつくっているし、どうせやるならオフグリッドという形でここだけで完結するところまでいこうと考えているわけです。今回はその最初のイベントということで、象徴的なものとしてバンライフフェスというのを開催しました」(渡鳥ジョニーさん)

オートキャンプ場としてビジター利用もできるし、さらにディープな拠点としても使える。ライフスタイルの選択肢として機能する場所に、いろんな形でバンライフを楽しむ人たちが集まった今回のイベントは、確かに象徴的な空間だったように感じました。

【バンライフフェス イベントクレジット】
主催:LivingAnywhere Commons八ヶ岳北杜
企画・運営:菅原拓也(Vanloop
協賛:EFDELTA(EcoFLow Technology Japan 株式会社)/尾西食品
展示協力:Mt. SUMI渡り鳥とカタツムリ鈴木大地.jpミチトライフCarstayMovingBaseLIFULL FAB
Special Thanks(順不同):うちゅうブルーイングえりキャン△暮らしのものさしみんなのダンボールマン/八ヶ岳準備隊/BananaKitchenVanboys

SPOT INFORMATION

LivingAnywhere Commons 八ヶ岳北杜

全国各地に7拠点を持つLivingAnywhere Commonsの八ヶ岳拠点。
「Living Lab」をコンセプトに衣食住や水光熱、トイレやお風呂といったインフラの制限から解放された状態で、便利に楽しく暮らせる「オフグリッド生活」の拠点を目指して、ここに集う人自身の手で現在も整備が進められています。
オートキャンプ場を中心に宿泊棟・レジデンス、コワーキングラウンジや配信スタジオ兼バーラウンジなどを備える建物が併設。メンバー会員は月額2.5万円での利用がもできます。
※2020年8月時点、宿泊はオートキャンプのみの利用

住所
山梨県北杜市大泉町谷戸5460
詳細ページ
https://livinganywherecommons.com/
https://livinganywherecommons.com/base/yatsugatake/

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