晩年の小津作品が生み出された蓼科高原で「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」上映作品は多彩な29本、小津監督生誕120年の特別企画も

蓼科高原の秋の風物詩「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」。今年は4年ぶりにコロナ以前と同じ規模・形態となり、9月23日から10月1日までの9日間にわたって、長野県茅野市の新星劇場と茅野市民館にて行われます。

小津安二郎監督が愛した“映画”と“蓼科”

黒澤明、溝口健二と並んで日本映画の三大巨匠と称され、世界からも注目され続けている小津安二郎監督。コンビを組んだシナリオライターの野田高梧さんの蓼科の山荘に初めて訪れた際に「水がうまい。洒がうまい。空気がうまい。」と、この土地をたちまち気に入り、脚本執筆のためにたびたび蓼科高原に訪れていました。蓼科高原は小津映画のこころのふるさとであり、この場所から晩年の多くの名作が生まれたのです。

そんな縁から1998年にスタートした「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」は、地元の人をはじめ、他県、そして海外までも、多くの小津ファン・映画ファンから愛されているイベントになっていきました。

小津作品は『東京物語』含む紀子三部作など計6作品を上映、『秋刀魚の味』朗読も

今回の上映作品は計29本。小津安二郎監督の作品としては、紀子三部作と呼ばれる小津の後期代表作『晩春』、『麦秋』、『東京物語』が登場。さらに『秋刀魚の味』をはじめ、『小早川家の秋』、『お早よう』、『秋日和』など蓼科の地で執筆された作品を加えた、計6作品が上映されます。

『秋刀魚の味』は、朗読劇「音語り」の企画でも登場。この朗読劇は「小津安二郎映画を聞くシリーズ」の企画で、幼少のころ小津監督から孫のように可愛がられていたという女優・中井貴惠さんによる朗読と、ジャズピアニスト松本峰明さんによる生演奏で行われます。ナレーションからト書きまでを一人で演じ分けるという今までにない上演スタイルにも注目です。

『百花』『ベイビー・ブローカー』『すずめの戸締まり』など国内外の話題作も

小津作品以外の邦画では、諏訪湖畔で撮影された『百花』をはじめ、日本アカデミー賞最優秀作品賞『ある男』、ドキュメンタリーとしては異例の20万人を動員した物語の続編『ぼけますから、よろしくお願いします。〜おかえり お母さん〜』、ノンフィクション書籍を原案とした『目の見えない白鳥さん、アートを見にいく』など計8作品が登場。

海外作品では、是枝裕和監督初の韓国製作作品『ベイビー・ブローカー』をはじめ、インドのミュージカルアクション映画『RRR』、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督の自伝的作品『フェイブルマンズ』、『パリタクシー』など計7作品が上映されます。

このほか、上映作にはアニメ映画もあり、『すずめの戸締まり』など計3作品が登場。蓼科高原映画祭の短編映画コンクールにてグランプリを獲得した監督の最新作などを見ることもできます。

タイムスケジュール

ゲストを迎えてのステージトークや、サイレント映画の上映など充実のプログラム

蓼科高原映画祭では、映画の上映以外にもさまざまなプログラムが充実しています。なかでもハズせないのは、映画上映の前後に行われるステージトークです。

小津監督の『秋日和』に出演している岡田茉莉子さんをはじめ、同作品の撮影監督・兼松煕太郎さん、『百花』の監督であり『すずめの戸締まり』のプロデューサーを務める川村元気さん、小津監督の甥である長井秀行さんなどをお迎えし、小津監督や小津作品の制作秘話など貴重なお話を聞ける機会となっています。

また、大人気企画のひとつである、活動弁士の澤登翠さんの語りと、無声映画専属楽団のギター・湯浅ジョウイチさんとフルート・鈴木真紀子さんのメロディーにのせたサイレント映画の鑑賞も行われますよ。今年は、喜劇王ハロルド・ロイドによる傑作コメディ『ロイドの要心無用』と小津安二郎による人情喜劇『出来ごころ』の2本をお届けします。

映画祭会場の新星劇場

過去開催の様子

小津安二郎監督 生誕120年特別企画も

小津監督生誕120周年の年という節目の年でもある今年は、さまざまな特別企画も用意されています。小津監督や野田高梧さんの写真に加え、当時の蓼科の写真などを展示する写真展「小津の愛した蓼科」や、映画の使用済みチケットで新・雲呼荘(野田高梧記念蓼科シナリオ研究所)に特別入館できるキャンペーン、小津監督が見た西部劇「捜索者」の上映などが行われます。ほかにも、蓼科高原映画祭の名物「おもてなし隊」が4年ぶりに復活し、こころづくしの手料理でみなさんをお待ちしていますよ!

小津安二郎監督

上映作品もプログラムも盛りだくさんの「小津安二郎記念・蓼科高原映画祭」。小津監督が晩年に暮らし愛した地で、小津監督が愛した「映画」という文化を満喫してみませんか?

[第26回 小津安二郎記念・蓼科高原映画祭]

開催期間
2023年9月23日(土)〜10月1日(日)
場所
茅野市民館(長野県茅野市塚原1-1-1)
新星劇場(長野県茅野市仲町9-15)
料金
フリーパス券(全ての上映作品(音語りを除く)を鑑賞可能)=4,500円、回数券(4枚綴り)=3,000円、1回券/前売り券=800円、当日券=1,000円、前売り券(子ども・学生)=600円、当日券(子ども・学生)=800円、3歳以下=無料、音語り=2,000円
販売場所&オンラインチケット詳細
https://ozueigasai1998.com/program/ticket/
イベント公式HP
https://ozueigasai1998.com/

SPOT INFORMATION

茅野市民館/茅野市美術館

茅野市民館は、劇場・音楽ホール、美術館、図書室、レストランなど、さまざまな機能を合わせ持ち、利用する方によって多様な使い道のある施設やスペースからなる、文化複合施設です。「市民一人ひとりが主人公になれる場」の理念のもと、建設計画から市民が直接参加してつくられました。JR茅野駅東口に直結した立地。さまざまな表現やアートに親しみ、文化をつくり、人々が集う、地域の交流拠点を目指しています。

住所
長野県茅野市塚原一丁目1番1号
電話番号
0266-82-8222
営業時間
9:00~22:00(図書室、常設展示室は9:00~19:00)
定休日
火曜日(火曜が祝日の場合は、その直後の休みでない日)
年末年始(年末12月29日~翌年1月3日)
駐車場
あり
詳細ページ
http://www.chinoshiminkan.jp/

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