冬に旬を迎える野菜といえば大根。この時期は八ヶ岳エリアでも各地で大根が収穫期を迎えています。
そのなかには地域の伝統野菜もあります。長野県諏訪市で育てられている上野大根もそんなひとつです。
諏訪のお殿様にも献上されていた名産品
上野大根は諏訪市の上野地区で育てられてきた伝統野菜。なんと400年近く前、江戸初期の寛永年間にはすでにこの地域でつくられていたとされています。17世紀後半から18世紀初頭にかけての元禄時代には、当時の諏訪高島藩のお殿様にも献上されていたそうです。
現在でも地域で大事に育てられており、2000年には「諏訪湖姫」という名前で品種登録もされています。
身の締まった大根をたくあん漬けに
そんな上野大根の特徴は固さと辛さ。大根おろしなどにするとピリッと辛さが際立つ薬味になります。
そして、特にメジャーなのはたくあんにする食べ方。干すことで引き出された甘み、そして身の締まった上野大根ならではのポリポリとした食感が特徴的で、長らく地域で愛されています。
諏訪地域では収穫期の11月ごろになると、上野大根のたくあん漬けの仕込みが行われています。
米ぬかの香りと、甘さを感じる松尾商店の上野大根たくあん漬け
創業100年を超える松尾商店さんもそんな上野大根のたくあん漬けをつくっているお店のひとつです。
松尾商店さんは1905年(明治38年)に創業。八ヶ岳から流れ出るミネラルをふんだんに含んだ地下水や、こだわりの塩、地元素材などを使い、手仕事で漬物をつくっているお店です。特に伝統製法でつくる野沢菜でも知られています。
そんな松尾商店さんの上野大根のたくあん漬けは、地元・茅野市の米沢地区で育てられた米沢米の米ぬか、高級柿「市田柿」の皮を使って、無添加・無着色で漬け込んでいます。
収穫した上野大根を干し、漬け込むのは11月ごろの時期ですが、松尾商店さんの場合、そこからさらに1年間低温で長期熟成。翌年ようやくお店に並ぶんだそうです。しっかり発酵、熟成させることで、白い大根が自然に黄色くなっていきます。
実際に食べてみると、最初に感じるのは「これぞたくあん!」という米ぬかの香り。長期保存するための伝統のつくり方を踏襲しているので、塩加減が強めではあるのですが、長期熟成したことで口当たりはまろやか。また、柿の皮などによる甘さが口に広がります。
そして、上野大根ならではの固い食感。食べるとまわりにも聞こえそうなくらい、ポリポリといういい音がするのを感じます。
仕込みは冬前の時期に一気に行いますが、店頭には年間通して並んでいますので、諏訪地域に来たときは、一度食べてみてください。
▶公式サイト:http://www.matuo.net/
▶店舗:松尾商店 本店=長野県茅野市米沢北大塩3833-1
ヨットハーバー店=長野県諏訪市高島3-1201-100
▶参考価格:諏訪上野大根沢庵 ぬか漬 486円