弦と笛と聲による古楽コンサート 「個の表現への解放」 16世紀から17世紀ポリフォニーからコンチェルターテへ

八ヶ岳・原村で音楽コンサートやワークショップなどを手掛けるムジカロセッタによる古楽コンサートが、6月25日、茅野市民館コンサートホールで開催されます。

数学的均整と宇宙的調和を求めたルネサンス音楽と、誇張された対比により劇的な感情の表出を求めたバロック音楽。ふたつの世紀を分断するこの深い谷に、果敢に橋を架けていった作曲家たちの求めた音とは……?

ムジカロゼッタと出演のスペシャリストたちが、音楽史上最も過激な転換点の一つに焦点を当てます。

O.ラッスス:「スザンナはある日」 G.バッサーノ編
ローレ:「別れの時」 G.B.ボヴィチェッリ編
ローレ:「宝石でもなく、金でもない」 G.D.カーサ編
G.P.da パレストリーナ:「わたしはこんなに傷ついて」 F.ロニョーニ編
D.カステッロ:現代的なソナタ・コンチェルターテ第2巻より
ソナタ第4番/ソナタ第8番/ソナタ第10番
A.グランディ:独唱のためのモテット集より「おお 清きものよ」

出演:丹沢広樹(バロックヴァイオリン)
細岡ゆき(ルネサンスリコーダー)
島根朋史(ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロックチェロ)
原謡子(ソプラノ)
金子浩(リュート)
杉本周介(オルガン、アルピコルド)

ムジカロゼッタより

なにやらすごいタイトルですが、ムジカロゼッタの今年1番の大きなコンサートになります。

14世紀から16世紀末の音楽史におけるルネサンス音楽は、音楽の数学的な調和を重要視していました。そのためルネサンス・ポリフォニーに代表される多声音楽は、この上ない美しさを持っています。ジョスカン・デ・プレのフランドル楽派の伝統を受け継いだシプリアーノ・デ・ローレやパレストリーナといった巨匠たちの音楽の美しさは、この世のものとは思えないほど美しいものです。

後期ルネサンス期には、こうしたポリフォニーの中でもそれぞれの声部を歌う歌手は、メロディーに音を任意に加えて演奏していました。元の旋律に即興を加えて華やかに演奏することは、スリリングな楽しみでもあります。即興の発展は名人芸で魅せる場としても発展しました。

ルネサンス音楽の、比較的緩やかな旋律線の音符を細かく分割し、たくさんの音符で装飾することによって即興的で変化のある音楽作りをしようとした試みの痕跡は、16世紀前半から見ることができます。1535年シルベストロ・ガナッシによる史料「フォンテガーラ」からは、リコーダーの演奏法に並んでこの装飾法についても論じられており、これに続いてこの分割による装飾法(ディミニューション)に関する書物は、1580年頃から特に多く出版されました。

アンサンブルの中で、ある一人が華麗で多彩なディミニューションを繰り広げ名人芸を披露することが浸透するにつれ、アンサンブルとしての調和よりも、よりソリストを前面に出した音楽作りが求められるようになります。

1600年頃にフィレンツェで演劇性の高いモノディの運動が成立すると、その流れは器楽の世界にも決定的な影響を及ぼします。通奏低音の台頭です。通奏低音は、バスの音を音符で書き記し、旋律とバスの間を満たす和音は、通奏低音奏者が適切かつ任意に選択しながら演奏します。この通奏低音の柔軟性が、ソロ声部に大きな自由度を与えることになります。

これを礎として、イタリアでは、コンチェルターテと呼ばれる単独もしくは複数の声部の独奏(独唱)群と通奏低音で構成された楽曲が、数多く作られました。この新しい演奏形態により、ときに過激とも言えるほど扇動的な音楽が、花火のように打ち上げられていったのです。

このルネサンスからバロックにかけて新しい試みを打ち出していった作曲家たちの熱い思いと試行錯誤を追っていくことが、この公演の狙いです。スリリングな公演となることでしょう。

「ムジカ・ロゼッタコンサート」でお馴染みの、丹沢広樹、金子浩、島根朋史に加え、細岡ゆきさんを加えた、ロゼッタのオールスターで、熱くお届けします。

出演者プロフィール

丹沢広樹(バロックヴァイオリン)
2000年より国内外で演奏。研鑽を積む。08年「Cembalism‼」の録音に参加。翌年NHK-FMに収録曲で生出演。同年「ソナール・カンタンド」での公演が月刊「音楽の友」誌にて『国内の年間コンサートベスト10』に選ばれ、2010、12年、ブレーシャ国際音楽祭に招聘され演奏。12年より、ピアソラ5重奏団を複数主宰。13年より鍵盤奏者の杉本周介と八ヶ岳を拠点に古楽プロジェクトを定期的に発信。14年「ソナ・カン」の初アルバム『ケルティック・バロック』をリリース。2015、17年「コントラポントのヴェスプロ」の収録に参加。2016年より横浜市、川崎市の事業を中心に室内楽シリーズ「楽壇の巨匠たち」を企画、発信。2019年、宗教曲として初の主催公演『Membra Jesu Nostri』を静岡音楽館AOIで手掛ける。ルネサンス~現代まで、西洋音楽のみならずタンゴやケルト等ジャンルを超えた奏法を実践する傍ら、幼児教育から多数のオーケストラの指揮、指導にあたる。

細岡ゆき(ルネサンスリコーダー)
上野学園大学リコーダー専攻卒業。リコーダーを山岡重治、濱田芳通、ヒストリカル・ハープを西山まりえ、声楽を阿部早希子の各氏に師事。ヴァルター・ファン・ハウヴェ、コリーナ・マルティにリコーダーを、ロベルタ・マメリ、ドロン・シュライファ―、ジル・フェルドマンのマスタークラスを受講。アントネッロ〈オペラ・フレスカ〉(モンテヴェルディ「オルフェオ」バストーレ、「オルフェオ物語」本邦初演。バッカスの巫女長)「モンセラートの朱い本」(NHK BSプレミアム「クラッシック倶楽部」で放映)などへリコーダー奏者 兼 歌手として出演する。「リコーダーアンサンブル百花繚乱」メンバー。アントニオ・カルダーラ記念アンサンブル代表。

島根朋史(ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロックチェロ)
オールガット弦の楽器を使用する。バロック・古典・現代の三刀流チェロ/ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者。東京藝術大学修士課程、パリ7区音楽院修了。東京藝術大学博士後期課程において博士号を取得。18-19世紀の読譜と奏法についての研究を進めている。同声会賞、大学院アカンサス音楽賞受賞。パリ歴史美術館、東京文化会館で、オリジナルスタイルのチェロを用いた、ソロ・リサイタルを催し好評を博す。NHK「ららら♪クラッシック」にて古楽器演奏及びトークで出演。バロックチェロを、A・ビルスマ、E・バルサ、鈴木秀美の各氏、ヴィオラ・ダ・ガンバをC・プリュボウ、福沢 宏の各氏に師事。古楽オーケストラ La Musica Collana 首席チェロ奏者を務めるほか、バッハ・コレギウム・ジャパン等日本の古楽主要団体で多数の公演に出演。2019年にリリースした初のソロCD「Les Monologues」は読売新聞等で推薦盤、レコード芸術で準特選盤に選出。昭和音楽大学 非常勤講師。日本弦楽指導者協会 正会員。

原謡子(ソプラノ)
東京学芸大学芸術専攻卒。中世、ルネサンス、バロックから古典派の歌曲を中心に演奏活動を行っている。古楽アンサンブル「コンチェルト・ソスピーリ」「はらむら古楽祭」(2016、2017)にて古楽アンサンブル「コントラポント」と共演、その他多くの古楽アンサンブルでソリストを務める。これまでにイギリス民謡をテーマとしたCD冊子「雪下の水音」CDアルバム「The Scenery of Old Songs」やCD冊子「鷲の羽音島巡礼記」をリリース。古楽歌唱を花井哲郎氏に学んだほか、ドロン・シュライファ―氏、波多野睦美氏、故クラウディオ・カヴィーナ氏の指導も受ける。古楽関連の企画運営事務局『MusicaRosetta』代表。

金子浩(リュート)
桐朋学園大学古楽器科卒業。オランダのデン・ハーグ王立音楽院に留学し、リュートを佐藤豊彦氏に師事。同音楽院リュート科教師ディプロマ及びソリストディプロマを取得。93年ブルージェ国際古楽コンクールに入選。オランダを中心にソリスト、通奏低音奏者として演奏会、レコーディングに参加する。帰国後、バッハ・コレギウム・ジャパンによる演奏会やレコーディングに参加。コンバティメント・コンソート等の日本公演ツアーに参加。2014年11月、ソロCD「ハートランド」が、エイベックス・クラシックスより再販。その他、アンサンブルでの録音も多い。独奏、アンサンブル、通奏低音として活躍している。NHK「ららら♪クラシック」などのテレビ番組にも出演してきた。洗足学園音楽大学非常勤講師。

杉本周介(オルガン、アルピコルド)
米国、スイスで作曲、チェンバロ、ピアノ、オルガンを学ぶ。16世紀から18世紀の様々な鍵盤楽器を中心に国内各地で演奏活動を行っている。古楽アンサンブル「コントラポント」「東京古楽団」「山梨バッハアカデミー・バロックオーケストラ」等で通奏低音奏者を務めた。バロック音楽がより親しみやすくなるトークコンサートを多数プロデュースしているほか、作編曲の活動、鍵盤楽器やアンサンブルの指導やワークショップを行っている。2020年に軽井沢の修道院に設置されているパイプオルガンの名器によるCD「定旋律の煌めき」(スウェーリンク作品集)を録音。八ヶ岳の麓に在住し日々森を歩き畑を耕すなど、自然と向き合う生活を実践している。「はらむら古楽祭」事務局メンバー。

弦と笛と聲による古楽コンサート 「個の表現への解放」 16世紀から17世紀ポリフォニーからコンチェルターテへ

開催日
2022年6月25日(土)
時間
14:00〜(開場=13:30)
出演
丹沢広樹(バロックヴァイオリン)
細岡ゆき(ルネサンスリコーダー)
島根朋史(ヴィオラ・ダ・ガンバ、バロックチェロ)
原謡子(ソプラノ)
金子浩(リュート)
杉本周介(オルガン、アルピコルド)
会場
茅野市民館(長野県茅野市塚原1-1-1) コンサートホール
JR中央本線「茅野駅」東口隣接
チケット
前売一般 3,500円
前売ペア 6,500円
高校生以下 1,500円
(当日各300円増し)
予約/問い合わせ
チケットのご予約はフォームからが便利です
https://forms.gle/mQSk9Y7SLVMpXwFP7

ムジカ・ロゼッタ(TEL=070-4430-0666
ヴィットーリオ・バロッコ(TEL=090-1749-2951
フラウト・カンタービレ事務局(TEL=050-5240-0345
駐車場
茅野市民館 駐車場
詳細ページ
https://musicarosetta.com/category/%e3%82%b3%e3%83%b3%e3%82%b5%e3%83%bc%e3%83%88%e6%83%85%e5%a0%b1/

SPOT INFORMATION

茅野市民館/茅野市美術館

茅野市民館は、劇場・音楽ホール、美術館、図書室、レストランなど、さまざまな機能を合わせ持ち、利用する方によって多様な使い道のある施設やスペースからなる、文化複合施設です。「市民一人ひとりが主人公になれる場」の理念のもと、建設計画から市民が直接参加してつくられました。JR茅野駅東口に直結した立地。さまざまな表現やアートに親しみ、文化をつくり、人々が集う、地域の交流拠点を目指しています。

住所
長野県茅野市塚原一丁目1番1号
電話番号
0266-82-8222
営業時間
9:00~22:00(図書室、常設展示室は9:00~19:00)
定休日
火曜日(火曜が祝日の場合は、その直後の休みでない日)
年末年始(年末12月29日~翌年1月3日)
駐車場
あり
詳細ページ
http://www.chinoshiminkan.jp/

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