諏訪の名産“かりん”は秋が収穫シーズン、今年も市役所などに並んでいます

八ヶ岳エリアはいろいろな野菜や果物が育てられている地域。なかにはちょっと珍しい名物もあります。

諏訪湖のほとり、長野県諏訪市でこの時期収穫を迎える“かりん”もそんなひとつです。

収穫された諏訪の“かりん”。大人の握りこぶしくらいのサイズの黄色い果実です。

“かりん”の実はあまり店頭などに並ぶことはあまりないため、馴染みのない人も多いかもしれません。一般的な果物のようにそのまま食べるのには向きませんが、香りがよく、シロップ漬けにしたりお酒に漬け込んだりすると、豊かな香りと食感を楽しませてくれます。

諏訪市では古くから親しまれており、1966年には諏訪湖畔に植樹され、かりん並木がつくられています。諏訪湖のヨットハーバーから蒸気機関車・D51が置かれているあたりまで、約1,200m、200本ほどの“かりん”が並んでいます。

諏訪の“かりん”、実は「かりん」じゃない?

市制施行60周年を迎えた2001年には市の木に選ばれ、市のバスなどいろんなところでモチーフに使われている“かりん”ですが、実はかりん並木などで育てられているのはかりんではありません。

地元民でも知らなかったりしますが、諏訪で“かりん”と呼ばれているのは、正確にはその多くがマルメロという果物です。

なぜこんなややこしいことになっているのでしょうか? 実はこの勘違い、そもそものはじまりは江戸時代まで遡るんです。

マルメロは江戸時代に諏訪湖周辺で育てられるようになり、長野県唯一の特産地となったのですが、その当時から「かりん」と呼ばれていました。この地域の人にとってはマルメロが「かりん」だったわけです。

ですが、明治時代に入ると、マルメロとかりんが混同されていることが議論されるようになり、明治41年(1908年)に諏訪地方でも専門家に鑑定を依頼。結果、かりんでなくマルメロであることが判明しました。

かりん並木の収穫の様子。

ですが、長年「かりん」と呼ばれて定着していたことから、その後も「かりん」の名前で呼ばれ続けることになったんです。

現在諏訪湖畔のかりん並木にも、本来のかりんが数本ありますが、ほとんどはマルメロ。混同から定着した呼称ではありますが、今も“かりん”として親しまれています。

収穫された“かりん”は市役所などで展示や配布も

そんな“かりん”の収穫期は秋。かりん並木でも例年10月中旬ごろに収穫が行われており、今年も10月13日にかりんの収穫が行われました。

かりん並木の収穫を行っているのは諏訪市の職員さん。専門の農家さんではないのですが、毎年のこととあって手際もバッチリ。毎年平均約4,000kgもの“かりん”が収穫されるのですが、1日でどんどん収穫されていきました。

収穫された“かりん”は、市役所や図書館など諏訪市内の施設のカウンターに展示されるほか、市役所などでは配布も行っています。今週ごろまではいろんな施設で見かけることができそうです。

ちなみに砂糖漬けなどの処理をして食べることもできますが、手間もあるので、果実自体は単純に部屋などに置いて香りを楽しむ人が多い印象です。果実そのままで売られていることもあまりありません。砂糖漬けの“かりん”などが特産品として販売されているので、食べる場合はそうしたものを買ってくる人が多いのではないでしょうか。

ちなみに「生食できない」ということで「おいしくないの?」と思う人もいるかもしれませんが、シロップ漬けなどで食べる“かりん”はおいしく、私自身も好きな果物です。独特の香りはもちろん、ちょっとシャリッとした食感があり、タルトなどにしても合いそうな味ですよ。食感的には少し固い洋梨といったイメージでしょうか。

全国的にも珍しい“かりん”。お土産物のお店などで並んでいるのを見かけたら、ぜひ手に取ってみてください。

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