八ヶ岳のカフェで過ごすひととき(3):街の、人の、ぬくもりを感じる、暮らしのなかにあるカフェ 富士見・onri

八ヶ岳にあるたくさんのカフェ。ほっと一息つきたいときに、誰かとのおしゃべりに、ちょっとした空き時間に……そんなひとりひとりの「わたしのひととき」に寄り添う場所。

さあ今日は八ヶ岳のカフェでどんな時間を過ごそうか。カフェめぐり好きのハチ旅スタッフ・Masoraがご案内します。

onri −工藝とおむすび−

のれんをくぐると目の前に広がる工藝品の数々。

作家ごとに展示された陶器や漆器、マットで艶やかな黒、柔らかく淡い白、個性あふれる作品たちが目を惹く。控えめでありながら力強い、想いの込められた作品が出迎えてくれる場所。

そんな空間をより穏やかにするのはヴァイオリンの音色。無伴奏のシンプルな演奏で、それでいて重なり合う和音が厚みを帯びて響いている。

その奥へと進んでいくと、カウンターから「お久しぶりです〜!」の声が。穏やかで、あたたかい場所での、わたしのひととき。

【この日にかかっていた音楽】

暮らしのなかにあるカフェ

長野県富士見町、駅前の商店街に軒を連ねるお店のひとつ、「onri −工藝とおむすび−」。おむすび・焼き菓子・珈琲をメニューとしたカフェのほか、店主であり染色家の佐渡勝行さんや作家さんの作品など、工藝品の展示・販売なども行っているお店です。

この商店街へ来るときは、駅前の駐車場に車を停めてカフェまでは徒歩で。その道すがらは、古い街並みと新しい文化が共存したような独特の情緒が感じられ、自分の足でそこへと向かう楽しさを教えてくれます。

お店に着いてのれんをくぐり、奥にあるキッチンカウンターへ早速注文に。onriではおむすびセットが定番。12種ある具材からどれを選ぼうか、いつも迷ってしまいます。うめ・こんぶ・しゃけといったなじみ深いものはもちろん、くるみ味噌やヤンニョムそぼろなどの変わり種も。いつもひとつはパッと決まり、もうひとつには少し時間がかかってしまうんですよね。

注文を終え、席へと向かう。私にとってカフェ巡りで大切なことのひとつは、お気に入りの席に座ること。冷え込む2月初旬の八ヶ岳エリアは、人の流れが落ち着き、多くのお店もそれほど混み合わないことが多いので、席を選ぶには絶好のチャンス。窓際の席に腰掛け、外に目を向ける。

商店街の一角に位置するここは、街ゆく人がよく見える。森に囲まれている場所も多く、車で移動することがほとんどのこの土地で、街を歩いている人を眺められるのは少し珍しい。

学校帰りの小学生、どこかのお店へ向かう人、仕事をしている人、暮らしのなかにあるカフェの一席で、ボーッと窓の向こうを眺める時間も嬉しいひととき。

onriで唯一のソファ席。2階席で静かに過ごすことができるので、本を読んだりゆったりと過ごしたいときにおすすめ。

ここも2階席。

そろそろかな……と思っていると漂ってくる海苔の香りとともに、おむすびセットが到着。今日選んだのは、焼きたらことすじことちょっと渋めのチョイス(笑)。

焼きたらことすじこのおむすび。副菜はさつまいものコロッケ、紅芯大根のナムル、さつまいもとレンコンのきんぴら、そして海苔と豆腐のお味噌汁。

大きくて中身がぎっしり詰まったonriのおむすび。誰かに握ってもらうおむすびは、子どものころも今も、きっとお年寄りになっても、いつでもホッとするしおいしい。お味噌汁に副菜におむすび、やっぱり日本っていいなあとしみじみ思ってしまいます。

人と人をも結ぶ“おむすび”

ひと息ついてお茶を飲んでいると、のれんをくぐる見覚えのある顔。「久しぶり〜!」と、友人に遭遇。最近の出来事を楽しく話終わると、またひとり、またひとりと次々に知り合いが。そしてその知り合い同士もみんな知り合い(笑)。

みんなで待ち合わせをしていたかのように集まってしまい、店主のご夫婦を含む店内全員が知り合いという状況に。いろいろなところで、誰かと誰かの会話が聞こえてくる緩やかな時間、それぞれのテーブルは違えど、みんなで過ごしているかのような感覚になりました。お米を結んだおむすびは、人と人も結んでしまうんですね。

奥に大きな本棚があって好きに読むことができるonriさん。席にも、ふと手にとって読める本が置いてありました。

どの席からも工藝品を眺めることができます。

店主の佐渡勝行さんは染色家さん。植物染料から染められた布の色あいは、時の流れとともに刻々と変化していきます。

珈琲と焼き菓子と

そしておむすびセットで満腹になっても、珈琲と焼き菓子は別腹。カウンターに足を運び選んだのは、深煎りのタンザニア マチャレAAとガトー・バスク。

席から見えるもうひとつのカウンターで、一杯ずつ丁寧にハンドドリップされる珈琲。

深煎りのタンザニア マチャレAAとガトー・バスク。

ガトー・バスクのアーモンドクリームやカスタードの甘さとラム酒のほのかな香りが、チョコレートのようなコクのある味わいの珈琲とマッチしていました。店主が厳選した珈琲は、ストレートやブレンド、アレンジメニューなど何種類もあり、そのときの気分や選んだ焼き菓子によって好きなものを選べますよ。

趣味でもあるという果物の瓶詰め。金柑、洋梨、あんず、いちじく、季節ごとに変わる色とりどりの果物はonriさんの焼き菓子にも使われます。

街の、人の、空間のぬくもり

窓にかけられた薄い桜色や生成色の布が、柔らかい日差しで淡く輝いて揺れる景色、街ゆく人の暮らしのなかに混ざる感覚、人と人の繋がりや誰かとの会話がある日常、onriでのひとときは、そんなぬくもりに包まれた時間。

街の、人の、ぬくもりを感じられるこの場所は、いろんな気持ちに寄り添う場所でもあります。ひとりでゆっくりと過ごしたいときにも、友人や家族とおしゃべりを楽しみたいときにも、そして少し寂しさを感じたときにも。どんな気持ちのときにも、「あ、onriに行ってみようかな」と思えるような、暮らしのなかにあるカフェです。

そんな場所で、あなたにとっての「わたしのひととき」を過ごしてみませんか?

[onri -工藝とおむすび-]

場所
長野県諏訪郡富士見町富士見4654-73
営業時間
11:00〜16:00
定休日
日、月、火曜
Instagram
https://www.instagram.com/onri_fujimi/

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